【高齢の親の引っ越し】慣れるまでの半年と元気なうちに動く理由

「環境を変えるなら元気なうちに」と書かれた親の引っ越しのアイキャッチ画像 くらし・住まい

母が、引っ越しをしました。二十年間住み慣れた賃貸マンションから、市営住宅へ。きっかけは、お金のことでした。

同じ市内への引っ越しです。だから私も、少し油断していたのだと思います。ところが実際には、思いもよらないことが次々と起きました。

  • 五分の道で迷う母
  • 開かなくなった玄関の鍵
  • 迷路のような九階建て

この記事では、そのてんやわんやの半年を書いておきます。今まさに親御さんの引っ越しで大変な思いをしている方に、「そのうち落ち着きますよ」と伝えられたらうれしいです。

引っ越しを決めた理由

引っ越しの準備で段ボール箱に荷物を詰めている手元

引っ越しは、母が望んだというより、これから先を見越しての判断でした。元気なうちに動いておいたほうがいい。そう考えたのには、はっきりした理由があります。まずは、その経緯から書いていきます。

これからの家賃の重さ

母の収入を考えると、当時の家賃は正直、高いものでした。これから年金暮らしになれば、もっと厳しくなります。

住居費は、毎月必ず出ていくお金です。先に見直しておくほど、あとが楽になります。

祖父からの先回りの提案

そう見越して先回りしてくれたのが、祖父でした。「市営住宅に応募しておいたほうがいい」と。

本人も家族も、困ってから動きがちです。まだ余裕があるうちに動いたのは、結果としてとてもよかったと思います。

市営住宅という選択肢

家賃を抑えられて、収入に応じた負担で住める。高齢の親の住まいを考えるうえで、有力な選択肢のひとつでした。

ただし、応募すればすぐ入れるというものではありません。ここからが長い道のりでした。

入居まで二年待った理由

市営住宅は、思っていたより順番待ちの世界でした。希望を出せば入れるわけではなく、どこを選ぶかで待つ年数が変わります。ここでは、私たちがどう考えて応募先を絞ったのかを書いておきます。

人気の住宅の待ち時間

新しくてきれいな住宅や、立地のいい人気の住宅は、希望者が多くて何年も待つこともあるそうです。

条件がいい場所ほど、埋まるのも早い。当たり前のようですが、調べてみて初めて実感しました。

あえて選んだ古い住宅

だから私は、あえて年数の経った古い市営住宅を狙いました。早く入れることを優先したのです。

それでも、実際に入れるまで二年かかりました。

譲れなかった二つの条件

古さは妥協しましたが、母のために譲れない条件も決めていました。

  • エレベーターがあること
  • 私の家と会社から近いこと

当時の母は「一刻も早くこの家から引っ越したい」という気持ちが強かったので、二年は長かったと思います。それでも、この二つだけは外しませんでした。

慣れない土地での戸惑い

ようやく入居できて、ひと安心。そう思っていたのですが、本当に大変だったのはここからでした。同じ市内だから大丈夫だろうという私の見通しは、早々に崩れることになります。

同じ市内という油断

引っ越し先は同じ市内でした。生活圏が大きく変わるわけではないと思っていたのです。

けれど、本人にとっての「知っている場所」は、思っているよりずっと狭い範囲でした。

方向音痴という難題

母は昔から、大の方向音痴です。自分の住まいの周り以外は、まったく土地勘のない人でした。

長く住んだ場所では、体が道を覚えています。その蓄積が、引っ越しでいったんゼロに戻ってしまうのです。

五分の道で迷った日

いちばん参ったのは、母のパートの通勤でした。新しい住まいからだと前より近くなって、車で五分ほどで行けるはずだったのです。

それなのに、「道に迷った」と。一本、入る道を間違えただけ。新しい住まいから目と鼻の先です。それでも母は大パニックになってしまいました。

鍵をめぐるひと騒動

戸惑いは、外の道だけではありませんでした。家の中でも、これまでと勝手が違うことが次々と出てきます。なかでも忘れられないのが、鍵の一件です。今では笑い話になっていますが、当時は必死でした。

かからなくなった玄関の鍵

「新しい住宅の鍵が、合わなくなった」と、母から電話がありました。私は会社を中抜けして、ホームセンターへ走ります。

鍵のすべりをよくするスプレーを買って差してみたら、ちゃんとかかりました。よかった、これで一安心。そう思って、鍵をかけて帰ったのです。

二度目の呼び出し

ところが、また電話が鳴りました。「鍵が、開けられない」と。私はまた会社を抜けて、駆けつけました。

一日に二度の中抜けです。仕事をしながらの対応は、体力より気持ちがすり減ります。

物置の鍵という真相

そして、気づいたのです。母は玄関の鍵ではなく、なぜか物置の鍵を使って開けようとしていたのでした。

あのときは「もう〜!」と思いましたが、今となっては、ちょっと笑ってしまう思い出です。

迷路のような九階建て

同じ形の扉が並ぶ、古い集合住宅の外廊下

新しい住宅は、九階建ての大きな建物でした。これまでの暮らしとは、規模がまるで違います。実はこの建物の造りが、母を最も混乱させました。私自身も、人のことは言えなかったのです。

初めての大きな建物

これまで母は、二階建てで四世帯くらいしかない、こぢんまりしたマンションにしか住んだことがありませんでした。

建物が大きくなると、覚えることも一気に増えます。階、方向、扉の位置。どれも今までは必要のない情報でした。

同じ扉が並ぶ通路

同じ造り、同じ見た目の扉がずらりと並ぶその住宅は、まるで迷路でした。正直に言うと、私でさえ最初は迷いました。

私が迷うくらいですから、方向音痴の母はもっとパニックです。エレベーターを降りたら、右か左か。ひとつ間違えると、まったく違うお宅の前に着いてしまいます。

前を歩いてもらった理由

だから私は、母を前に歩かせました。後ろから「そこ、右やで」「次は、左」と、何度も何度も一緒に練習したのです。

手を引いて連れて行くのは簡単です。でも、それだと母はいつまでも覚えられません。母が自分の力でたどり着けるように。そう思って、あえて前を歩いてもらいました。

半年たって落ち着いた今

あれほど大変だった日々も、気づけば過去のものになりつつあります。特別なことをしたわけではありません。ただ、時間が過ぎただけです。それでも、確かに変わったことがあります。

通えるようになったパート

母は今、すっかり新しい住まいに落ち着きました。パートにも、ちゃんと通えています。

あれほど迷っていた道も、もう大丈夫です。

覚えられた道順

前を歩いてもらった練習は、無駄ではありませんでした。自分の足で歩いた道は、ちゃんと残るのだと思います。

遠回りに見えても、本人が覚えられるやり方を選んでよかったと感じています。

時間が解決したこと

振り返れば、本当に大変な時期でした。会社を何度も抜けて、駆けつけて。「もう〜!」と頭を抱えた日も、一度や二度ではありません。

でも、こうして時間が経てば、ちゃんと落ち着く日が来るのです。

高齢の親の引っ越しでよくある質問

同じ場面で迷いやすいことを、質問の形でまとめました。私の経験からの答えなので、ひとつの参考として読んでいただければと思います。

市営住宅はすぐに入れるのか

希望者が多い住宅では、何年も待つことがあります。早く入りたい場合は、築年数の経った住宅を選ぶと順番が回ってきやすくなります。

高齢の親の引っ越しで気をつけることは

家賃だけでなく、建物の造りも見ておくことをおすすめします。エレベーターの有無や、間取りの分かりやすさは、暮らし始めてから効いてきます。

慣れるまでどのくらいかかるのか

母の場合は半年ほどでした。最初の数か月がいちばん大変だったので、そこを乗り切れば落ち着いてきます。

道を覚えてもらうにはどうすればよいか

親御さんに前を歩いてもらい、後ろから声をかける方法が役立ちました。手を引くより時間はかかりますが、自分で覚えられます。

引っ越し後に不安が強いときは

最初のうちは、こちらが駆けつける回数が増えて当然です。仕事との両立が難しいときは、家族や近くの方に事情を伝えておくと安心できます。

まとめ 環境を変えるなら早いうち

そして、今になって思うことがあります。引っ越したとき、母は七十代の後半でした。

もし、これがあと少し遅かったら。新しい環境に慣れるのは、もっと、もっと大変だったかもしれません。だからこそ思うのです。環境が大きく変わることは、まだ動けるうち、少しでも早いうちのほうがいいのかもしれない、と。

  • 元気なうちに動く住まいの見直し
  • 古い住宅という現実的な選択
  • 自分で覚えてもらう関わり方
  • 落ち着くまでの数か月

もし今、親御さんの引っ越しを考えている方がいたら。あるいは、慣れない環境でてんやわんやしている方がいたら、大丈夫と伝えたいです。最初は迷って当たり前。パニックになって当たり前。少しずつ、少しずつ慣れていけばいいのです。物置の鍵で玄関を開けようとした母だって、今はちゃんと暮らせているのですから(笑)。

母の物忘れが増えてきた時期のことは、親に何度も言うほど心が離れてしまう本当の理由に書いています。よかったら、そちらも覗いてみてください。

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