母には、認知症の症状があります。しっかりしている時と、そうでない時が、まだらにやってくるのです。
そうでない時の母は、決まってそわそわしています。同じことを何度も確認して、忘れて、また聞く。正直に言うと、以前の私はこれが本当に苦手でした。
- 繰り返される同じ質問
- つい出てしまうきつい返事
- そのあとの自己嫌悪
けれど最近、ある見方に気づいてから、少しだけ楽になりました。同じことで参っている方に、その気づきをお伝えします。
まだらにやってくる母の症状
母の場合、症状はいつも同じように出るわけではありません。日によって、時間によって、状態が変わります。この波があることが、家族にとっては分かりにくいところでした。まずは、その様子から書いておきます。
しっかりしている時の母
しっかりしている時の母は、以前とほとんど変わりません。会話も普通にできますし、こちらが気を回す必要もありません。
だからこそ、次に会ったときの落差に戸惑うことになります。
そわそわしている時の母
そうでない時の母は、決まってそわそわしています。落ち着かない様子が、見ていて伝わってくるのです。
同じことを何度も確認して、そして忘れて、また聞く。この繰り返しが続きます。
見分けのつきにくさ
見た目では、どちらの状態なのか分かりません。話し始めて、しばらくしてようやく気づくこともあります。
この分かりにくさが、すれ違いのもとになっていたのだと思います。
何度も同じことを聞かれる日々

繰り返し確認されること自体は、一度や二度なら何でもありません。けれど、それが続くと話は別です。こちらにも生活があり、疲れもあります。当時の状況を書いておきます。
繰り返される確認
同じことを、何度も、何度も確認されます。こちらは一度答えたつもりでも、また同じ質問が返ってくるのです。
答えても答えても、話が前に進まない感覚がありました。
忘れてまた聞く
答えたことを忘れて、また聞く。そのたびに、同じ説明を繰り返します。
本人に悪気がないことは分かっています。分かっていても、こちらの気持ちは追いつきませんでした。
積み重なるこちらの疲れ
一回ずつは小さなことです。けれど積み重なると、確実に消耗していきます。
仕事を終えたあとや、急いでいるときほど、こたえました。
以前の私の受け止め方
今振り返ると、当時の私は母の行動を「困らせるもの」として受け取っていました。悪気がないと理解しながらも、気持ちがついていかなかったのです。恥ずかしい話ですが、正直に書いておきます。
つい出てしまった言葉
「なんで、そんなに何度も聞くの」「さっき言ったでしょう」。そんな言葉が、つい口から出てしまいました。
言ったあとで、決まって後悔します。それでも、次の機会にはまた同じことを言ってしまうのです。
理由が分からない苛立ち
いちばんつらかったのは、理由が分からないことでした。どうして何度も聞くのか、見当がつかなかったのです。
理由が分からないと、こちらは受け止めようがありません。ただ、目の前の繰り返しに反応するだけになってしまいます。
がっくりくる毎日
そのたびに、がっくりきていました。今日もまただ、という気持ちになるのです。
母のことが嫌いになったわけではありません。それでも、気持ちがすり減っていくのは止められませんでした。
ふと気づいた母のサイン
見方が変わったのは、ほんの小さなきっかけでした。特別なことを学んだわけでも、誰かに教わったわけでもありません。ただ、ふとそう思えた日があったのです。
忘れてしまいそうな不安
もしかして、これは「忘れてしまいそうで、不安」になっている母のサインなんじゃないか。最近になって、ふとそう思ったのです。
確かに、そわそわしている時に確認が増えます。順番が逆だったのかもしれません。
確認は安心を求める行動
何度も聞くのは、私を困らせたいからではない。忘れてしまうのがこわくて、確かめずにいられないのではないか。
確認は、不安を埋めようとする行動だったのかもしれません。
変わった見え方
そう思えたら、不思議なもので。同じ母の、同じ行動なのに、見え方が少し変わりました。
イライラが、ほんの少しだけ「大丈夫だよ」という気持ちに変わったのです。
変わったのは私のほうだった

この気づきで、母の症状が軽くなったわけではありません。状況は何ひとつ変わっていないのです。それでも、以前より楽になりました。理由はひとつだけでした。
母は何も変わっていない
母は、何も変わっていません。今も同じように、何度も確認します。
変わったのは、私の受け止め方だけでした。
返し方が少し変わった
不安のサインだと思えると、返す言葉も自然と変わります。
- 否定しない返事
- 短く言い切る答え
- 落ち着いた口調
同じ質問でも、返し方が変われば、その場の空気も変わってきました。
大丈夫だよと言えるように
今は、「大丈夫だよ」と言えることが増えました。完璧にできているわけではありません。
それでも、以前よりは穏やかに向き合えている気がします。
親の物忘れでよくある質問
同じ場面で迷いやすいことを、質問の形でまとめました。私の経験からの答えなので、ひとつの参考として読んでいただければと思います。
同じことを何度も聞かれたらどう答えればよいか
短く、同じ答えを返すようにしています。説明を増やすより、はっきり言い切るほうが落ち着いてくれることが多いです。
何度も聞かれてイライラするのは普通か
普通だと思います。疲れているときほど反応してしまうもので、それはあなたが冷たいからではありません。
「さっき言ったでしょう」と言ってはいけないのか
言ってしまっても、自分を責めなくて大丈夫です。ただ、相手が不安で聞いていると分かると、こちらの言い方も自然と変わってきます。
まだらに症状が出るとはどういうことか
しっかりしている時と、そうでない時が入れ替わる状態のことです。見た目では分かりにくいので、気になる場合は医師に相談してください。
どこに相談すればよいか
お住まいの地域にある「地域包括支援センター」で相談できます。診断がついていない段階でも大丈夫です。
まとめ 何度も聞くのは不安の裏返し
何度も同じことを聞かれると、こちらは参ってしまいます。それでも、その繰り返しには理由があるのかもしれません。
- まだらに現れる症状
- 不安から生まれる確認
- 変えられるのは受け止め方
- 相談先は地域包括支援センター
もし今、親御さんが何度も同じことを聞いてきて、がっくりきている方がいたら。あれはもしかしたら、あなたを困らせたいわけじゃなくて、ただ不安なだけなのかもしれませんよ。
念押しを繰り返して失敗した話は、親に何度も言うほど心が離れてしまう本当の理由に書いています。よかったら、そちらも覗いてみてください。

